フィオナにとって、文化祭を成功させた達成感は、彼女の高校生活において大きな出来事だった。霧人やルカと一緒に活動し、自分がクラスメイトや生徒会のメンバーにとって頼りにされる存在になれたという自信が、少しずつ彼女の中で育っていた。
しかし、フィオナの心の中には、次第に恋愛感情が芽生え始めていた。霧人への尊敬の気持ちが、彼との時間を重ねるごとに徐々に特別な感情へと変わっていった。彼が周囲に与える優しさやリーダーシップ、そして人を引きつけるカリスマ性に、フィオナは強く惹かれていた。
文化祭が無事に終わり、成功の喜びに浸る中で、フィオナは自分の気持ちをどうしても抑えきれなくなっていた。彼に対する想いが日に日に強くなり、このまま黙っていられないと感じたフィオナは、ついに意を決して告白することを決めた。
ある日の放課後、フィオナは霧人に手紙を書いて渡す決意をした。彼に自分の気持ちを伝えるため、何度も手紙を書き直し、慎重に言葉を選んだ。そして、その手紙を彼に直接渡そうと心を決めた。
放課後、フィオナは校舎を出て生徒会室の前に立ち、霧人が出てくるのを待っていた。彼女の心臓は激しく鼓動し、緊張が高まっていった。ついに霧人が姿を現すと、フィオナは彼を呼び止めた。
"霧人くん、少しお話ししたいことがあるの"とフィオナは勇気を振り絞り、彼に声をかけた。
霧人は微笑んで近づき、フィオナの真剣な表情に気づいて少し戸惑ったが、"もちろん、どうしたの?"と優しく応じた。
フィオナは震える手で手紙を差し出し、"これ、読んでほしいの"と言った。彼女の声は震え、胸の内で湧き上がる感情を抑えきれないままだった。
霧人は手紙を受け取り、フィオナに目を向けた。"フィオナさん、これは…?"
フィオナは一瞬、言葉を失いかけたが、深呼吸をして続けた。"ずっとあなたのことが好きでした。ずっと言えなかったけれど、文化祭を通じてもっと強く思うようになったの。だから、この気持ちを伝えたいと思ったの。"
霧人は手紙を見つめ、しばらく黙っていた。そして、ゆっくりとフィオナの目を見て、静かに話し始めた。
"フィオナさん…君が僕のことをそう思ってくれていたこと、本当に嬉しいよ。でも、僕は今、君に恋愛感情を持っていないんだ。君のことはとても大切な友達だと思っているし、これからも変わらず一緒に頑張っていきたい。でも、今は友達としての関係を続けたいんだ。"
霧人の言葉に、フィオナは一瞬で世界が崩れ落ちるような感覚に襲われた。期待と希望を胸に秘めていた彼女にとって、その答えはあまりにも辛いものだった。しかし、霧人が丁寧にフィオナの気持ちを受け止め、誠実に応じてくれたことは、彼の優しさを感じさせた。
フィオナは何とか笑顔を作り、"分かったわ。ありがとう。友達として、これからも一緒にいられるなら、それで十分よ"と答えたが、胸の奥は締め付けられるように痛んだ。
その日の夜、フィオナは自室で一人、失恋の痛みと向き合った。彼女の心には霧人への想いがまだ残っており、友情として続けることができるのか、自信を持てなかった。だが、それでも霧人との関係が失われることなく続くことを、心のどこかでほっとしている自分もいた。
しかし、フィオナが失恋の痛みに向き合っている最中、もう一つの問題が彼女の前に立ちはだかる。それは、妹ナオの異変に気づいたことだった。